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東京高等裁判所 昭和26年(う)2349号 判決

控訴人 被告人 下山重雄 外三名の原審弁護人 岡崎一夫 外一名

検察官 渡辺要関与

主文

本件控訴はいずれもこれを棄却する。

理由

本件控訴の趣意は末尾に添附した弁護人岡崎一夫、同山内忠吉両名の共同作成名義にかゝる控訴趣意書と題する書面のとおりで、これに対し当裁判所は次のとおり判断する。

第三点一九四五年九月一〇日附連合国最高司令官指令「言論及新聞の自由に関する覚書」(以下単に覚書と略称する)第三項に所謂連合国に対する破壊的な批評とは、ひろく占領目的に有害な非建設的な言説の一切を指称するので、所論のように連合国の占領目的に対して現実にそして顕著に害悪を生ぜしめる程度のものに限らない。論旨第二点において説明したような連合国の占領に反対しこれを非難するものも包含するものと解するのが相当であるから、原判決は何等右覚書の解釈を誤つてこれを適用したものとは認められない。論旨は理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 吉田常次郎 判事 石井文治 判事 鈴木勇)

弁護人の控訴趣意

第三点一九四五年九月十日附最高司令官の覚書は覚書自体に明記されている通り、占領の大眼目とせられる民主的傾向の助長と連合国の指導によつてつくられた日本国憲法の保障ある言論の自由とに牴触しないように細心の注意をもつて解釈、運用されなければならない。然りとすれば連合国に対する破壊的な批評とは、現実にそして顕著に、占領に関与する連合国の占領目的に対して害悪を生ぜしめる程のもののみを指称すると解すべきが至当である。本件ビラの記載の如きはどうひねくれて解釈してみても、右のような危険をはらむものとは、ほど遠い存在である。原判決はその罰条として挙示する前記覚書の解釈を誤つて之を適用した違法がある。

(その他の控訴趣意は省略する。)

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